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【2025年最新版】精神障がい者雇用の現状と課題|雇用が難しい理由・助成金・雇用成功のポイントまで徹底解説

精神障がい者雇用のアイキャッチ

「精神障がい者の雇用を進めたいけれど、どう対応すればいいかわからない」
「採用してもすぐ辞めてしまう」
「社内の理解が追いつかない」

そんな悩みを抱える企業担当者は少なくありません。

近年は、法定雇用率の引き上げやSDGs・人的資本経営の流れもあり、積極的な障がい者雇用が求められるようになりました。そのなかで、精神障がい者の雇用をどう実現し、どう定着につなげるかが、多くの企業に問われています。

そこでこの記事では、精神障がいの特徴や、障がい者雇用の現状と課題、さらに雇用を成功させるポイントなどをわかりやすく解説します。

目次

精神障がいとは?企業が理解すべき基礎知識

精神障がいとは、うつ病や統合失調症、双極性障害(躁うつ病)など、脳や心の働きに何らかの不調をきたす状態を指します。見た目には分かりにくい「見えない障がい」であるため、本人も周囲も気づきにくく、職場での理解不足や誤解が起きやすいのが特徴です。

まずは、主な精神障がいの種類と、それぞれの特性を解説します。

精神障がいの代表的な特性(うつ病・統合失調症・双極性障害など)

厚生労働省が「障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン」を参考に記載した、代表的な精神障がいとその特性をまとめると、以下のようになります。

精神障がい名 主な特性
統合失調症 幻覚・妄想などの「陽性症状」、意欲低下・集中力の欠如などの「陰性症状」。疲れやすく、情報処理が苦手。
うつ病・双極性障害 気分の落ち込み・無気力、または躁状態による活動過多。感情の波が激しい。
てんかん 脳の電気的活動異常により発作が起こる。発作間は通常の生活が可能。
依存症(アルコール・薬物・ギャンブル等) 行為を繰り返さないと満足できず、生活や仕事に支障が出る。
高次脳機能障害 記憶・注意・判断・感情制御の障害。見た目では分かりづらい。

出典:厚生労働省「精神障害(精神疾患)の特性(代表例)」

特に、「ストレス・環境変化・情報量の多さ」が悪化要因となりやすいのが特徴です。企業で雇用する場合には、医療・支援機関との連携が必要なケースもあります。

また、精神障がい者以外の雇用についても検討している方は、以下の記事をチェックしてみてください。

障がいの種類と特性別の特徴・配慮事例|合理的配慮の義務化・職場での具体例・雇用のポイントまで解説

企業が知っておきたい精神障がい1~3級の違い

精神障がい者の多くは「精神障害者保健福祉手帳」を取得しており、障がいの程度(1〜3級)が分類されています。

等級 状態の目安 職場での特徴・対応ポイント
1級 日常生活がほぼ自立できない状態であり、常時介助や支援が必要。 フルタイム勤務は難しい。 短時間・在宅・補助業務中心。 ジョブコーチなど支援機関の同行が有効。
2級 日常生活に著しい制限があるが、援助があれば作業可能。 軽作業やサポート業務など、ストレスの少ない環境が望ましい。 配慮すれば安定就労が可能。
3級 軽度〜中等度の支援が必要であり、社会生活や勤務に一部制限あり。 定期的なフォローや勤務調整で、一般就労も十分可能。 体調変動時の柔軟な対応が重要。

出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」

つまり、3級に近いほど一般業務に従事する際の配慮事項が少ない傾向にあります。ただし、1級に近い方でも、企業側のサポートさえあれば、安定した就労を行えます。

【グリーンリンクラボ担当者コメント】
なお、精神障害者保健福祉手帳の有無は、本人の開示意思に委ねられるため面接時に無理に尋ねることはNGです。本人や保護者等の同意のもとで等級を確認しましょう。

企業における精神障がい者雇用の現状【2025年最新】

2025年現在、精神障がい者の雇用は着実に拡大しています。

かつては採用や定着が難しいとされていましたが、法定雇用率の引き上げや企業の理解促進により、採用市場の中心層として注目が高まっています。

ここでは、企業における最新の精神障がい者雇用の状況について解説します。

出典1:厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」
出典2:厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査結果報告書」
出典3:NIVR「障害者の就業状況等に関する調査研究」

精神障がい者の雇用数は増加している

2024年(令和6年)の時点で、民間企業に雇用されている障がい者数は15万717人となり、前年よりも15.7%も増加しました。

この増加は、テレワークや短時間勤務など柔軟な働き方の導入が進み、企業側の受け入れ環境が拡充したことが背景にあります。また、ハローワークを通じた就職支援制度の活用も進み、精神障がい者の「働く意欲」を支える仕組みが浸透しつつあることが主な理由です。

身体・知的・発達障がいと比べた雇用状況の違い

精神障がい者は、民間雇用全体の約22%を占めており、今や主要な雇用層となっています(令和6年度の総就労数67万7,000人のうち15万1,000人が精神障がい者)。

一方で、平均勤続年数が短く、離職率が高い傾向も指摘されています。

離職する期間の傾向
出典:NIVR「障害者の就業状況等に関する調査研究」

たとえば、NIVRの調査資料によると、就職後1年を経過した際の職場定着率は、精神障がい者が49.3%ともっとも低い値となっています。これを踏まえると、離職率を下げるためにも、職場内メンター制度やジョブコーチの導入など、定着支援に重点を置くことが大切です。

また、定着率アップの方法を知りたい方は以下の記事もご参照ください。

障がい者雇用の定着率を高める方法は?離職率の状況や離職理由も解説

非正規雇用が多い背景と平均月収の実態

精神障がい者の給与事情
出典:厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査結果報告書」

精神障がい者の雇用では、短時間勤務や柔軟な就労形態を希望する人が多いことから、非正規雇用の割合が高い傾向にあります。体調の波や通院などに合わせて働けることが、長期的な就労継続につながるためです。

また、厚生労働省の雇用実態調査によると、精神障がい者の1か月あたりの平均賃金は14万9千円(所定内給与14万6千円)となっています。さらに労働時間別でみると次の通りです。

  • 週30時間以上:19万3千円
  • 20〜30時間未満:12万1千円
  • 10〜20時間未満:7万1千円
  • 10時間未満:1万6千円

支払形態は時給制が53.6%、月給制が43.4%と、柔軟な雇用契約が主流です。このように、非正規雇用が多い背景には「働きやすさ」を重視した選択があり、企業側も個々の状況に合わせた働き方を認める文化が広がりつつあります。

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精神障がい者の雇用が難しい・採用されにくいと言われる理由

精神障がい者の雇用は年々増加している一方で、「採用が難しい」「定着しにくい」と感じる企業も少なくありません。

ここでは、精神障がい者の雇用が難しいとされる主な理由と、その解決策を3つの観点から解説します。

(参考:NIVR「支援困難と判断された精神障害者及び発達障害者に対する支援の実態に関する調査(2019年3月)」

【理由1】職場定着率が低い

もっとも大きな課題は、就職後の定着率の低さです。

精神障がいをもつ方の多くは、体調や感情の波が仕事に影響しやすい特性があります。そのため、うつ状態や不安が強くなると集中力が落ち、欠勤や離職につながるケースも少なくありません。

特に、次のような要因が退職理由として挙げられます。

  • 職場の理解不足により孤立した
  • 仕事内容が本人のペースや特性に合っていない
  • 定期的な面談やフォロー体制がない

しかし、これは「本人の努力不足」ではなく、組織側の支援設計で防げるケースが多くあります。たとえば、以下のような工夫が定着率の改善に有効です。

  • 上司・同僚が病気の特性を理解するための社内研修を実施する
  • 週1回の面談で体調や業務量を確認する
  • ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援を活用する

企業側の理解とフォローがあれば、安定して働き続ける社員に成長する可能性が高いです。

【理由2】個別対応や合理的配慮に時間と労力がかかる

もうひとつの理由は、合理的配慮の個別対応に時間がかかるという点です。

精神障がいをもつ方は、同じ診断名でも症状や得意・不得意が異なるため、一律のマニュアル対応では難しい場合があります。以下に例をまとめました。

  • ある人は「静かな環境」で集中できるが、別の人は「人の声がある方が安心」
  • 指示は口頭よりも「紙・チャット」で整理してもらえる方が理解しやすい
  • 「評価」や「面談」など心理的負担を感じやすい場面で緊張してしまう

こうした対応には、上司・同僚・人事担当者の協力が必要ですが、実際には現場任せになってしまい、支援体制が不十分な企業が多いのが実情です。

しかし近年は、厚生労働省が提供する支援制度(ジョブコーチ支援障害者短時間トライアル雇用助成金精神障害者等ステップアップ雇用奨励金など)を活用できます。外部の専門家と連携して合理的配慮を整えることで、上記の課題を解決しやすくなっています。

企業が精神障がい者を雇用するメリット

精神障がい者の雇用は「配慮が必要」「難しい」という印象を持たれがちですが、実際には企業にとって大きな成長チャンスでもあります。法定雇用率の達成はもちろん、職場環境の改善や企業イメージの向上にもつながる点が注目されています。

ここでは、企業が精神障がい者を雇用することで得られる3つの主要なメリットを紹介します。

また、障がい者全般を対象とした雇用のメリットを知りたい方は、以下の記事がおすすめです。

障がい者雇用のメリット・注意点とは?助成金・課題を企業目線で徹底解説

【メリット1】法定雇用率の達成につながる

精神障がい者を雇用する大きなメリットのひとつが、法定雇用率の達成に近づけることです。

2024年4月(令和6年)から、民間企業の法定雇用率は2.5%に引き上げられました。さらに、2026年7月(令和8年)には2.7%まで上がる見込みです。これにより、今後さらに多くの企業で障がい者採用が求められます。

(出典:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」

そして精神障がい者は、就労意欲が高く、ほかの障がい種別に比べて採用マーケットで人材を確保しやすい若年層に集中しているという強みがあります。そのため、企業にとっては法定雇用率の達成を現実的に進めやすいのが特徴です。

また、近年は在宅勤務・短時間勤務など柔軟な働き方を導入する企業が増加中です。「フルタイムでなくても働ける」「体調に合わせて時間を調整できる」といった仕組みを整えることで、採用の裾野を大きく広げることが可能になります。

【メリット2】多様な人材活用による職場改善・向上を期待できる

精神障がい者の雇用は、多様性(ダイバーシティ)を活かした組織づくりに直結します。

たとえば、職場に多様な背景・価値観をもつ人がいることで、自然と以下のような良い変化が生まれます。

  • コミュニケーションを意識した丁寧な伝え方が増える
  • チーム内での助け合い・気づきが多くなる
  • 働き方の見直しが進み、生産性が上がる

また、精神障がい者は真面目で几帳面な人が多い傾向にあることから、業務の正確性・安定性を求めるポジションに強みを発揮しやすいのが特徴です。

さらに、精神障がい者雇用を進めることで、社員一人ひとりの「心理的安全性」が高まる効果も期待できます。他者への理解や配慮が自然と広がることにより、結果的に離職率の低下・職場満足度の向上につながるのです。

【メリット3】CSR・SDGsの観点で企業価値が向上する

精神障がい者を受け入れることは、社会的責任(CSR)やSDGsの実践としても大きな意義があります。

まず、雇用を通じて得られるのは「社会貢献」の実績だけではありません。精神障がい者と共に働くなかで、企業内には支援・配慮のノウハウが蓄積されていきます。そしてこのノウハウは、次のように従業員全体のメンタルヘルス向上にも直結します。

  • 「メンタル不調を早期に察知する仕組み」が職場全体で育つ
  • 不調者を出さない環境設計、発生時のフォローアップ体制が整う
  • 休職した社員の職場復帰支援がスムーズになる

つまり、精神障がい者の雇用は、全従業員が安心して働ける企業文化の形成にもつながるのです。単なるCSR活動ではなく、「持続可能な人材マネジメント」の一部になると言えます。

障がい者雇用に合わせて「ESG」「SDGs」「採用ブランディング・社外評価の向上」にも取り組んでいきたいなら、グリーンリンクラボが提供する「森林保全型障がい者雇用」がおすすめです。

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企業が精神障がい者を雇用する際の注意点

精神障がい者の雇用を成功させるためには、「特別な支援」よりも相手に合わせた柔軟な配慮が重要です。症状の特徴を理解し、安心して働ける環境を整えることで、職場定着率を高めることができます。

ここでは、企業が注意すべき4つのポイントを紹介します。

また、高齢・障害者雇用支援機構の「精神障害者雇用管理マニュアル」をもとに、企業事例も整理しました。

【注意点1】症状の波(体調のアップダウン)に応じた勤務調整が必要

精神障がいには、症状や体調の波があるのが一般的です。

業務負担が増えたり、季節や人間関係の変化で体調が崩れることもあります。そのため、短時間勤務やリモートワークなど柔軟な勤務形態を取り入れることが大切です。

定期的な面談で状況を共有し、無理のない範囲で働ける環境を維持しましょう。

【企業事例】
繊維製品加工を営むある企業では、社員とのコミュニケーションを優先し、仕事に少しずつ慣れてもらうために、1日2〜3時間から仕事をスタートできるようにし、徐々に勤務時間を長くしていく工夫がされました。

【注意点2】服薬管理や通院配慮が重要

精神障がいの治療は、服薬と通院の継続が就労の安定を左右します。

そのため障がい者雇用として受け入れをする際には、通院日や服薬の時間に合わせて勤務スケジュールを調整できる柔軟性が必要です。また、体調変化に気づいた際には、無理に仕事を続けさせず、早めに休養や受診を促すことが望まれます。

安定した治療が、長期雇用の鍵となるため、コミュニケーションを通じて精神障がいを持つ方の状況を確認することが大切です。

【企業事例】
紙製品製造販売を営むある企業では、精神障害をもつ方が自己判断で服薬を中止してしまうケースもあるようです。服薬をしないと能率が落ちてしまうケースがあることから、絶えず注意指導を行うことが徹底されています。

【注意点3】ストレス要因への感受性が高いため環境調整が不可欠

精神障がいのある方は、ストレスへの感受性が高い傾向があります。

たとえば、急な指示変更や厳しい口調など、職場内の些細なストレスが体調悪化につながることもあります。そのため、静かな作業環境の確保や、明確で丁寧な指示伝達を意識することが重要です。

過度なプレッシャーを避け、安心して働ける職場づくりを目指しましょう。

【企業事例】
ソフトウェア開発業を営むある企業では、気分やストレスを自己管理し、気分の落ち込みやストレスの軽減を図るための支援として、リワーク支援を実施。終日の活動日数を伸ばすことに成功しています。

【注意点4】「見えにくい障がい」ゆえの理解不足や偏見に注意

精神障がいは外見から分かりにくく、周囲の理解不足や誤解が生じやすい点にも注意しなければなりません。

特に、「怠けている」「気持ちの問題」と捉えられてしまうと、本人の負担が大きくなります。障がい者雇用に関する社内研修を実施するなど、職場全体で正しい知識を共有し、共に働く仲間としての理解と受け入れ姿勢を育むことが大切です。

精神障がい者が働きやすい仕事【一覧表】

下記の一覧表は、全国の支援機関・企業事例から見た「働きやすい仕事」の例と、各職種における配慮ポイントをまとめたものです。

職種カテゴリー 主な仕事内容 主な配慮ポイント
事務補助・一般事務 データ入力、書類整理、スキャン作業など 明確な業務手順、静かな環境
軽作業(製造・検品・包装) 製品の組立・検品・袋詰めなど 作業手順の可視化、休憩の取りやすさ
清掃・メンテナンス業務 施設内清掃、備品管理など 作業範囲の明確化、音刺激への配慮
ITサポート・データ入力 システム入力、メール対応など 指示を文書で残す、進捗報告の仕組み化
図書・倉庫整理 書籍や在庫の分類・登録 単純作業で集中できる環境
農作業・園芸補助・森林保全 施設園芸、花苗育成、軽作業 天候・体調に応じた調整、無理のないスケジュール

上記はあくまで一例ですが、特に「静かな環境」「マニュアル化された手順」「上司が固定されている」など、刺激が少なく予測しやすい職場が向いている傾向があります。

逆に制限されやすい仕事一覧

精神障がいのある方は、業務内容や勤務環境によって体調への影響が変わるという特徴があります。

たとえば、同じ診断名であっても「得意」「苦手」は人によって異なり、またその日の体調や睡眠リズム、薬の影響などによっても普段できる作業が難しくなる場合があります。そこで制限を受けやすいのが次のような仕事です。

業務カテゴリ 主な仕事内容 制限されやすい理由・リスク要因
接客・販売業 店舗での接客、レジ対応、クレーム応対など 対人対応や突発的なトラブル対応が多く、ストレスや緊張が高まりやすい
営業職(ノルマ型) 新規開拓・外回り営業など 数値目標のプレッシャーや顧客交渉による心理的負荷が大きい
コールセンター業務 電話応対、クレーム処理など 一日中対話を続ける環境で、精神的ストレスや疲労が蓄積
夜勤・交代制勤務 深夜勤務・交代シフト 生活リズムの乱れが体調変化を悪化させる要因

ただし、ここで挙げる内容は「制限されやすい傾向のある職種・業務例」であり、一律に“できない仕事”と決めつけるものではありません。むしろ、本人の特性を理解した上で、配置や業務の切り分け、サポート体制を工夫することが重要です。

精神障がい者雇用を成功させるためのポイント

精神障がい者の雇用は、「採用すること」よりも定着して活躍できる環境づくりが何よりもの成功です。

そのためには、業務設計・職場文化・支援体制の3つを整えることが重要です。以下に、企業が取り入れるべき実践ポイントを整理しました。

  • 業務を細分化し、負担を軽減する仕組みを整える
  • 心理的安全性を高める職場文化を醸成する
  • 外部支援機関との連携で職場定着を支援する

これらの取り組みを進めるうえで大切なのは、個々の特性や体調の波を理解し、柔軟に対応できる職場体制をつくることです。

業務の見える化や明確な役割分担によって混乱を防ぎ、心理的に安心できる職場づくりを進めることで、生産性と定着率の双方を高められます。さらに、外部の専門支援機関と連携すれば、企業単独では難しいフォローアップや復職支援も可能となり、結果として「離職を防ぎ、安心して働ける職場」を実現できます。

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企業が活用できる精神障がい者雇用制度【一覧表】

精神障がい者の雇用を安定して進めるためには、助成金・支援制度・専門機関を上手に活用することが大切です。

国や自治体では、雇用環境の整備や職場定着を支援するための制度が数多く用意されており、活用することで採用コストの軽減や職場環境の改善につなげることができます。以下に、企業が利用できる代表的な制度を一覧表にまとめました。

区分 制度名 内容・対象
雇用開始支援 障害者トライアルコス・障害者短時間トライアルコース 精神・発達・身体障がい者などを一定期間試行的に雇用する制度
職場定着支援 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) 発達・精神・難治性疾患患者を継続雇用した企業を支援する制度
職場環境整備 障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース) 雇用後6か月以上継続している障がい者の定着を目的に、職場環境の改善や支援体制を強化した企業を支援する制度
復職・再就職支援 リワークプログラム うつ病などで休職中の社員の職場復帰を支援する訓練プログラム
外部サポート 職場適応援助者(ョブコーチ)支援 精神・発達障がい者などの就職や職場定着を支援する専門職「ジョブコーチ」が企業と本人を支援

これらの制度は採用前(トライアル)→雇用時(開発助成)→定着(安定助成・ジョブコーチ)→復職(リワーク)といった流れで連動します。制度を組み合わせて活用することで、精神障がい者の採用から定着まで一貫した支援が可能になります。

また、障がい者雇用支援サービスや支援機関の選び方を知りたい方は、以下の記事もおすすめです。

障がい者雇用支援サービス・支援機関の選び方は?

失敗例から学ぶ精神障がい者雇用の準備の流れ

精神障がい者の雇用は、採用段階よりも「受け入れ準備」と「定着支援」の体制が成否を分けます。実際に多くの企業で見られる失敗例を振り返ると、準備不足・情報共有不足・サポート体制の不明確さが共通しています。

ここでは、よくある失敗の流れをもとに、企業が取るべき改善ポイントを整理しました。

失敗の内容 背景・原因 改善策
採用だけを急ぎ、社内理解が追いつかない 法定雇用率達成を優先し、配属先への情報共有や教育が不足。現場が特性を理解せずに配置される。 採用前に「社内説明会」や「受け入れマニュアル」を整備し、関係者へ特性理解を共有。
業務内容が抽象的で、本人が混乱する 「臨機応変」「自己判断」など曖昧な業務内容により、混乱・不安を招く。 業務を細分化し、手順書・チェックリストで「やること・順番・期限」を明確化。
相談できる人がいない 上司以外に相談相手がいないため、問題が悪化するまで表面化しない。 人事・産業医・ジョブコーチなどを含む支援ネットワークを構築。定期面談を実施。

多くの失敗は「採用後のフォロー不足」や「社内理解の欠如」に起因しています。採用前から準備を進め、“受け入れ体制を整えてから採用する”ことが成功の近道です。

精神障がい者雇用に関するよくある質問【FAQ】

精神障がい者に向いていない職業はある?

一概に「向いていない職業」があるわけではありませんが、強いストレスや緊張を長時間伴う仕事(例:ノルマが厳しい営業職、不規則勤務の接客業、クレーム対応中心の職種など)は注意が必要です。重要なのは、「どんな仕事ができるか」よりも「ストレスとどう付き合うか」を考えることであるため、体調の波に合わせて勤務形態を調整すること、サポート体制を整えることが安定に欠かせません。

精神障がい者雇用の平均月収はどれくらい?

厚生労働省の「障害者雇用実態調査(2023年)」によると、精神障がい者の平均月収は約14万9,000円です。なお週所定労働時間が30時間以上の場合には、20万円近い収入を得ている方もいます。なお、業種・雇用形態・勤務時間によって差がある点に注意してください。

精神障がい3級でも障がい者雇用率にカウントされるのか?

精神障がい者保健福祉手帳の等級(1〜3級)を取得していれば、いずれも法定雇用率の算定対象になります。等級はあくまで支援の必要度を示すものであり、3級でも条件を満たせば雇用率制度上の対象です。

精神障がい者の雇用についてハローワークに求人を出すのはあり?

もちろん可能です。ハローワークでは障がい者専用の「専門援助部門」があり、求人作成からマッチング、採用後の定着支援まで一貫してサポートしてくれます。トライアル雇用制度や助成金申請も同時に相談可能です。

まとめ|精神障がい者雇用は「難しい」から「共に働ける」へ

精神障がい者の雇用は、特別なことではなく、誰もが安心して働ける職場づくりの延長線上にあります。そして重要なのは、「難しいから避ける」ではなく、特性を理解し支え合える仕組みを整えることです。

業務の明確化や柔軟な勤務調整、支援機関との連携を通じて、企業と本人の双方にとってプラスの結果を生み出せます。精神障がい者雇用は、単なる法的義務ではなく、多様性と持続可能な成長を実現する第一歩なのです。

障がい者雇用は「コスト」ではなく「未来への投資」です。 

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監修

鈴木 勇(スズキ イサム) 
株式会社ミチルワグループ Green Link Lab.富山 チーフマネージャー
1990年東北福祉大学卒業後、障害者職業カウンセラーとして、約20年にわたり全国各地の地域障害者職業センターに勤務。障がい者雇用対策の拡充とともに各地に導入されていく「職業準備支援」「ジョブコーチ支援」「リワーク支援」などの新規事業に携わってきました。2014年からは富山県の発達障害者支援センターで成人期の就労支援を担当。2023年からは社会福祉法人の相談支援専門員として勤務しています。2025年4月から現職。

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